料理人の修行は本当に必要か?-変わりつつある飲食業界-
一流の料理人になるためには何年もの修行がかかるといわれています。
辛く厳しい修業期間のあいだにはパワハラも横行する環境にあり、逃げ出してしまう人や辞めてしまう人もも少なくないようです。
また、物事を合理的に考える風潮から、そもそも料理人の修行について否定的な考え方をする人も出てきました。
そこで今回は、料理人が修行する必要性についてを考えてみましょう。
一流までの道のりは遥か彼方?-長すぎる下積み-
料理人になるには厳しく長い修行が必要で、フレンチ・イタリアンの洋食、もとい日本料理・鮨など和食では繊細で高度な技術を身につけて一人前になるまでに8~10年ほどはかかるといわれています。
しかも、1日12時間以上働くのは当たり前のような世界ですから内容の濃い長い年月です。
それでは、和食の世界を例に説明していきましょう。
仕事内容は、修行する飲食店によっても違いはあるものの、基本的に調理業務から入ることはなく、最初に与えられる仕事は「追い回し」と呼ばれる雑用のポジションです。
調理場の掃除・食器洗い・食材の下処理をしながら調理場全体の仕事を把握する仕事で、一般的には1~3年とされていますが、お店によって期間は大きく変わるでしょう。
新人が入ってこなければ、ずっと追い回しをしなければならないなんてこともあるかもしれません。
飲食で働く人は高卒も多く、料理人になるために修行の道に入ると遊びたい盛りの10代後半から20代半ばまでの期間を修行に費やすことになります。
当然、精神的にも辛くなるでしょう。
ただし、10年もの修行期間が必要なのは大きな割烹料理店や飲食店の話で、小規模の料理店では色々なことをやらせてもらえるので、一人前となるにはもう少し期間は短くなります。
このような現状から、料理人になるには一般常識からかけ離れた厳しい修行期間を耐え抜く気持ちが必要で、誰でもなれるわけではないといえてしまいます。
つまり、一人前の料理人となるには、常人とは異質の精神力が必要です。
中途半端な気持ちで料理人の道を志しても挫折するリスクが圧倒的に高いといえるでしょう。
暴力暴言は当たり前の世界だった!?-厳しすぎて辛すぎる昔ながらの修行-
料理人の世界は下積みが長すぎるということに加え、今ではだいぶなくなってはいるようですが、暴力や暴言が横行しているという現代離れした独特の職業でもあります。
「パワハラ」という言葉は料理人の仕事にぴったりと当てはまると言えるかもしれません。
ちょっと考えにくいかもしれませんが、令和の時代にあっても日常の業務で暴力が横行しているのが飲食店の実態です。
しかも、昔から当たり前のように暴力を振るってきた飲食店では、先輩から後輩への暴力が指導という意味合いで捉えられているため、パワハラという認識はないようです。
若手のスタッフが何か失敗をした際に先輩スタッフが暴言を吐くというのはどの業界でもありえること。
さらに暴力までとなると行き過ぎ・・・と思うところではありますが、残念ながら事実。
しかも、調理場は狭い空間であるうえに働いている人はいつも同じです。
閉鎖的な空間だからこその状況と言えるもので、古くからの慣習が変わることはあまり期待できません。
先輩や料理長にターゲットにされやすいのは、立場が一番弱い追い回しをしている見習いスタッフというケースが多く、怒りの矛先にされるとそれが何年も続くことになります。
だから飲食店の仕事は退職率が高い!?-若手スタッフが育たない理由-
飲食店の仕事は退職率が高いといわれています。
農林水産省が2018年に公表したデータによると、飲食サービス業の離職率は50.2%となっていて、全産業の平均離職率である32.2%に比べて大幅に高くなっています。
たしかに、厳しい修行を必要とする料理人の世界で離職率が高いのはうなずけるところ。
長すぎる労働時間、日常的なパワハラやモラハラ、適切なコミュニケーションができない労働環境では、仕事を続けている従業員のほうがどうかしているように感じてしまいますよね。
加えて、料理人の世界は同じ職場で働いていると言っても仲間意識は低く、同僚すべてが調理場のトップを目指すライバルです。
先輩スタッフが親切丁寧に調理方法を教えてくれることは稀で、基本的には「見て学ぶ」「技を盗む」ことで成長していくものですから、これができない若手スタッフは料理人の世界でやっていくことは難しいでしょう。
とはいえ、50%を超える飲食業の離職率を高めているのは、料理人の話だけではなく業界全体に原因があります。
まず、若手スタッフがお店に入ってきても長続きしないのは職場環境が整っていないことが大きな理由のひとつです。
飲食業界には、仕事量に対して給料が低く、休憩時間が短く休日も少ないといった問題が昔からあります。
しかも、求人情報で書かれていた内容と異なっている場合も多々あります。
募集内容で書かれていた労働時間や休日、給料面などに魅力を感じて応募したものの、蓋を開けてみたら求人情報の内容とは違ううえに、劣悪な労働環境となれば離職してしまうのも無理はないでしょう。
加えて、先輩スタッフから仕事を教えてもらえず放置されるようであれば、仕事場で孤立してしまう状況になるので、やはり退職につながってしまいます。
飲食業界にはどうして今も辛い修行の文化が残っているのか?
料理人の世界において修行の文化が残っているのは、外からどれだけ批判されても必要不可欠なものだからという考えがあるからです。
調理に関する必要な知識や技術は調理専門学校で学ぶことは可能ですが、学校で学べるのはあくまでも基本的な事柄ばかりで、実践的なスキルは身につけられません。
いざ飲食店で働くと、学校で学んだことはほとんど役に立たないというケースも多いため、期間の長さはお店ごとに違うとしても修行は欠かせないものといえます。
もちろん「修行」という名の下で、若手スタッフをこき使ったり調理技術を教えなかったりするのは「悪しき慣習」です。
こんな辛い思いをする修行をしなくても、料理人としてやっていける方法はあると考える人も多いでしょう。
たしかに、魚をおろせなくても切り身を買ってくれば良いでしょうし、化学調味料を使えば美味しい料理ができてしまうので修行なんて必要ないともいえます。
回転寿司のチェーン店のなかには、寿司職人ではなくパート・アルバイトや寿司ロボットが握った寿司を提供していても売り上げが伸びているところもあります。
これで良しということになれば、いずれは別の業態でも同じようなスタイルで営業されることになり、いずれ厳しい修行を積んだ料理人は不要となるかもしれません。
また、ホリエモンの愛称で知られる実業家の堀江貴文氏が、寿司業界について「問題なのは職人としてのセンスで、何年も修行するのはバカだ」と過去にツイートしたことがありました。
料理学校を卒業して自己流でやっている人もいる、不足する部分はできる人間を雇えばいいなどとも発言したようですね。
たしかに、経営者として独立するならその考え方でも良いでしょう。
経営スキルがあれば料理人としての技術は関係ありません。
しかし、料理人として飲食の世界で活躍したいと考えるなら、やはり修業は必要です。
修行を積んだ料理人が提供する料理は、やはり大手飲食チェーンの出来合い料理とは雲泥の差がありますし、パート・アルバイトによる調理でも大きな違いがあります。
一流の料理人が捌いた魚は明らかに見た目が違いますし、揚げ物や炒め物、蒸し物などの食感や味の深さも素人の調理とは全く異なるものです。
そして、特に日本料理の世界では料理人を目指すことそのものが日本料理の伝統を守ることにつながっているとい背景があります。
このような点からも、飲食業界における修行の文化はしばらくなくなることはないでしょう。
最短距離で一流の料理人へ!-変わりつつある飲食業界-
料理人の世界では依然として厳しい修行が続いている一方で、10年もの長い年月を修業期間に費やすのは嫌だと思う人もいるでしょう。
むしろそれが当然の考えといえるかもしれません。
パワハラが横行するようなお店に就職してしまったら、無駄に年月を過ごすことになってしまうおそれがあります。
なかには「お前はサラダ場だけしてろ」なんて言われて、新卒からの2年間ずっとサラダ場をしていて、カットや盛り付けしかしていなかったなんてケースもあるほどです。
今までの話を聞いてしまうと、一流の料理人になるためには長い年月がかかってしまう…と思いますよね。
しかし、最近の飲食企業ではこうした古い風潮をなくそうと、若手の育成に関して見直しを図っているところが増え始めました。
つまり、無駄が多い修行の時間、暴力や長い労働時間が当たり前の時代は、もはや終わりつつあるのです。
たとえばですが、チェーン業態であれば誰でもできるようにわかりやすいマニュアルがあって、それを元に調理していけば、美味しい料理も作れます。
飲食店でのお仕事が完全に未経験でしたら、こうしたマニュアルが整っているチェーン業態から入ってみるのもアリですね。
とはいうものの、「一流の料理人になりたい!」となれば、チェーン店はちょっと…なんて思う方もいらっしゃるかと思います。
では、その中でですが、専門店でも最短距離で即戦力になってもらうような教育プログラムを整えているところも増えてきています。
ある飲食店のケースでいうと、最初の段階は営業時間はホール業務を行ってメニューを覚えて、仕込みの時間で先輩と一緒に準備をする傍ら、余った時間で前菜の作り方を教えてもらいます。
ここでは「見て覚える」というよりは、先輩が新人に対してひとりひとりに就いて指導していくので、古い時代の指導法よりも早くに若手を戦力にすることができるのです。
また、労働環境の改善を図るため、採用に力を入れて戦力を増やして、スタッフが休みやすいようにしているところも増えています。
こうしたことから、2シフト制にして労働時間を短くしたり、月8日休み以上にしてプライベートの時間も確保しやすいようにしている企業や飲食店も多いですね。
こうした飲食店や企業がどんどん増えていけば、一流の料理人になりたい!と思う若手も増えるかと思いますし、「飲食店の仕事はブラック」なんて言われることもなくなるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
今回は飲食業界として、昔から残っている文化?とされる料理人の修行についてお話ししてまいりました。
無駄な雑用時代、暴力や長い時間の拘束があると、今の若者はついていきません。
高齢化社会で例えると、若者が育たなければ、飲食店もとより飲食業界に明日はないと言っていいでしょう。
だからこそ、今一度飲食店や企業には教育環境と労働環境の見直しをしていかないと、経営自体が成り立たなくなってしまうかもしれませんよ…!?
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著者プロフィール
小学6年生の時に某テレビ番組の取材で有名ホテル総料理長に出会い食の世界に魅了されて、中学2年生の時に海外派遣団に参加。シンガポール及びマレーシアへ訪れた際に海外の食を知る。高校1年生から単身カナダへ渡り世界の食に触れ、帰国後は飲食人としての人生をスタート。複数の飲食店でのアルバイトを経験し、新卒で居酒屋リーディングカンパニーの人事労務に勤める。上場及び未上場の飲食企業複数社にて、人事、新卒及び中途採用、教育、経営企画、株式上場などの責任者(部長・局長)を歴任。面接人数は8,000名以上、各専門学校にて就職ガイダンスの外部講師として講演活動も積極的に行っている。
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