飲食店の怒りの声!-時短拒否で東京都を訴えたグローバルダイニングについて-
新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食業界は甚大な損害を被りました。
飲食店いじめとしか言えない国のコロナ対策により、残念ながら閉店に追い込まれたお店も多く、飲食業界にいるみなさんにとっては他人事ではないでしょう。
このようななかで、怒りがMAXになったのがグローバルダイニングという企業でした。
今回は、グローバルダイニングを率いる長谷川社長の発言内容とともに、東京都を提訴した理由と内容を紹介します。
グローバルダイニングについて
グローバルダイニングは、1973年に創業社長の長谷川耕造氏が長谷川実業を設立したのが始まりで、同年に喫茶「北欧館」をオープン。
続けざまにパブレストランやアンティークショップなどを開業しました。
1991年にはアメリカ進出を果たし、1997年に株式会社グローバルダイニングに変更、1999年には東証2部に上場しています。
2021年7月時点で国内外に43店舗を展開していて、イタリア料理店の「カフェ ラ・ボエム」、メキシコアメリカ料理店の「ゼスト キャンティーナ」、アジア料理店の「モンスーンカフェ」、和食店の「権八」など人気店がずらりと並びます。
その理由として、おしゃれな店内空間が挙げられるでしょう。
人によっては、ちょっとハードルが高いと感じてしまうかもしれませんが、グループ内のなかでも「ラ・ボエム」は値段が手ごろで雰囲気もおしゃれということで人気があります。
ちなみに、大人気となったアニメ「君の名は」に登場する瀧くんのアルバイト先として使われていたので、ファンの聖地巡礼にも利用されているかもしれませんね。
順調満帆といった感じに売上を伸ばしてきたグローバルダイニングの状況が一変したのは、新型コロナウイルスの感染拡大です。
ほとんどの飲食店が影響を受けているなか、多分に漏れずグローバルダイニングもその猛威にはかないませんでした。
2020年12月期の売上高は、前年度比41%減となる56億6,700万円に留まり、大赤字を計上する結果に。
資本金の大幅な引き下げも実行するなど、コロナによって経営が圧迫されている状況です。
東京都が飲食店に対して出した時短営業の要請について
2021年の2月には、2回目となる緊急事態宣言が発出されましたが、グローバルダイニングは時短要請に従わずに通常営業を続けました。
まず、2回目の緊急事態宣言下で東京都から飲食店へ出された時短営業の要請内容をおさらいしておきましょう。
・アルコール類の提供は午後7時まで
・午後8時には閉店
・要請に協力した店舗には1日6万円の計算で、店舗ごとに一律168万円の協力金を支給
この要請の最大の問題点と言えるのが、1日6万円の協力金について店舗の規模が考慮されていないという大きな穴。
つまり、席しかないお店も100席以上あるお店も協力金の金額は同じということです。
さすがにこれには総ツッコミが入りましたが、東京都は変更しませんでした。
グローバルダイニングが2度目の緊急事態宣言下における時短営業の要請を受けなかったのは、これが大きな理由となっています。
政府からの要請を受け入れないのは勇気のある行動だと称賛する声も上がりましたが、売上規模の大きな外食チェーンの社長がこのような行動を取るのは異例ですよね。
長谷川社長によると「うちは規模として大きいほうなので、1日6万円という協力金では、とてもではないが会社の存続にとってサポートになりえない。」とのことですが、これは当然の訴えです。
たとえば「ラ・ボエム」の座席数は120席もあるので、6万円の支給だけでは間に合うはずがありません。
長谷川社長は、行政の感染症対策に大きな疑問を抱いていて、次のように語っています。
「コロナに関するいろいろな科学的分析がされるなか、行政の感染症対策に対し、大きな疑問があった。国内の死者数を見てもこれまでで約9,000人と、過去のインフルエンザと比べても少ない。こうしたなか、飲食店に対し1度目の緊急事態宣言のときと同じような施策を打つことには納得ができない。」
たしかに、1度目の緊急事態宣言のときは、コロナについてわからないことが多かったので厳粛な対応をするのは納得できましたが、2度目の緊急事態宣言は約1年後です。
1年も経つのに同じ対策をするということは、行政は1年間何もしてこなかったのと同じといわれても仕方ないでしょう。
長谷川社長は相当うっぷんが溜まっていたのでしょう。
さらに爆発して次のようにも語っていました。
「ほかの施設が営業しているなか、飲食店だけが20時閉店というのは理解しがたい。行政は、恐怖心をあおるようなことばかりで、むしろ政策によって生きるか死ぬかという塗炭の苦しみを味わっている人がたくさんいるのではないか。法律上も要請は行政指導であり、従う義務はないと考えている。」
これには飲食業界のほとんどの人たちが大きくうなずいたのではないでしょうか。
特に、客席数の多い店舗の経営者は表立って声を上げることはできなかったにしても、陰ながら応援したはず。
前年の売上を考慮した協力金の支給なら休業するのも致し方なしというところですが、一律6万円では呆れて物も言えないでしょう。
さらに社長は続けます。
「昨年2020年は、前年比で売上が半分近くまで下がって、創業以来最大の赤字を出した。幸いなことに、銀行や政府系金融機関からお金を借りることができたが、今後また時短で同じようなことが起きたら、金融機関も貸し渋る可能性があるだろう。」
たしかに、コロナは2021年8月時点でも終わりが見えません。
ワクチン接種が始まってようやく元の生活に戻れるかと思いきや、感染拡大によって7月12日から4回目の緊急事態宣言が発出となり、お先真っ暗の状況です。
このような状況下で、金融機関に融資を申込んでも貸し渋りが起こるのは当然と言えるでしょう。
仮に、日本の行政がきちんと納得できる対策をしていれば、グローバルダイニングも時短要請に応じていた可能性は高かったかもしれませんね。
東京都がグローバルダイニングに向けて要請→命令へ変えた背景
時短要請に従わなかったグローバルダイニングに対して、東京都は怒り心頭だったかは定かではありませんが、緊急事態宣言解除まであと4日という3月18日、時間短縮営業の「命令」が出ることに。
要請から命令に変わった背景には長谷川社長のSNSが関係しているようですが、一体どういうことなのでしょうか。
まず、時短営業の命令について、長谷川社長が以下のように発言しています。
「違法な行為をするつもりはなかったので、要請よりも強い命令が出れば従う予定だともともと発信していた。だが、時短要請に応じられない正当な理由を示した弁明書のなかで感染症対策などに対する疑問を書いたが、それに対する回答はゼロだった。」
要請や命令は出しても質問には答えない姿勢は行政としてどうなのでしょうか。
東京都から下された命令書が公開されていますが、そのどこを見ても長谷川社長が投げかけた疑問に対する回答が一切書かれていませんでした。
また、東京都がグローバルダイニングに時短営業の命令を出した理由のひとつとして「原告は緊急事態措置に応じない旨を強く発信している」ことを挙げていました。
これは、長谷川社長が自らのSNSでコロナ対策の是非などについて発信していることを指しているのでしょう。
グローバルダイニングの代理人を務めている弁護士は「個人の発信を受けて行政が命令を出すことは、表現の自由の損害にあたるのではないか」と話しています。
今回のようなSNSでの発信に対して行政が命令を出すような事態になるのであれば、個人も簡単に投稿しにくくなってしまうでしょう。
東京都の調べでは、時短要請に応じなかった飲食店の数は約2,000店舗で、命令が出されたのはわずか27店舗です。
しかも、そのうちの26店舗がグローバルダイニングですから、狙い撃ちと言わざるを得ませんね。
菅総理は、3月18日の記者会見で記者会見の解除を発表したにもかかわらず、都が同日に時短営業の命令を出した点も何だか不可解というか、嫌がらせのニオイがすると思われてしまう方も出てきてしまいますよね…。
なぜグローバルダイニングが東京都を訴えたのか?
自治体を訴える行為は手間も労力もかかりそうですが、それでも長谷川社長が訴訟という行動に出るくらいですから、腹に据えかねていたのでしょう。
この訴訟、請求額104円という点も話題になりましたね。
今回の訴訟にあたりグローバルダイニング側は、時短命令は病床使用率などが大幅に改善された状況で出されたもので、特措法上の要件を満たしていないと訴えています。
さらに、そもそも飲食店が主な感染経路という明確な根拠がないのに、一律で営業制限をする特措法は憲法違反だとしています。
たしかに、コロナによるクラスターの発生は、接待を伴う「夜のお店」ではあったものの、一般の飲食店は特にクラスターが発生しているわけでもないため、明確な根拠に欠けています。
それなのに、飲食店だけが悪者扱いをされて自粛要請が出たという構図なのです。
つまり「クラスターが発生する確率が高い」「おそらくクラスターが発生するだろう」という推測のもとで飲食店全般に時短要請や命令が出ているといえます。
業態を考慮せずに、飲食店だからという理由で一律に規制してしまうのは「指先を怪我して病院に行ったら腕全体を切断された」というのと同じこと。
当時の世論は政府のコロナ対応がぬるいと酷評されていましたが、だからといって思い切った行動をすればいいというものではありません。
そもそも、東京都のモニタリング会議によると、飲食店は感染経路として平均4%くらいです。
もちろん、グローバルダイニングでも従業員のマスク着用や手指消毒、施設の消毒などの感染症対策を実施していました。
完全な対策とまでは言えなくても、指定された対策を行い感染予防に努めているお店まで時短命令を出す必要はないのでは?ということです。
長谷川社長は、訴えたことについて「損失を補償するための提訴というよりも、露呈された日本の法の支配や民主主義の脆弱さを今一度問うということが中心だ」と話しています。
つまり、今回訴える理由は「協力金をもっと出せ!」というよりも「制度を改善しろ!」という意味合いが強く、日本の制度の仕組みに対して疑問を投げかけたものといえるでしょう。
そして注目するべきは訴訟の請求金額わずか104円だったという点。
報道を見た際に、数字の間違いやフェイクニュースだと感じた人も多いのではないでしょうか。
104円だった理由は、訴訟がお金目当てでないことをハッキリと伝えるためのものだったようですね。
金額の内訳は、1店舗あたり1日につき1円。26店舗が時短営業の命令を受けて4日間時短営業したため104円ということです。
この金額について、長谷川社長は「経営者としての本音を言えば、損失を戻してほしいという気持ちもゼロではないが、僕らが言っても共感を得られないと思った。」と話しています。
正しい損失額を算出して訴訟するのが本来の在り方のような気もしますが、たしかに世論の共感という点では共感を得られにくいという見方もできますね。
うがった見方をすると、この訴訟が注目されたことで、グローバルダイニングは大きな広告効果を得られたのかもしれませんが…。
時短営業の要請を守る飲食店と時短をせず通常営業をする飲食店について
時短要請をしなかったグローバルダイニングに対しては、さまざまな意見があったようです。
なかでも、時短要請に応じたほかの大手チェーンからは、以下のような意見というよりはクレームが出ました。
「社会的責任として行政からの時短要請を受け入れた飲食店が苦境に陥り、要請に応じなかった貴社の売上が増加したことに疑問を感じる。」
たしかに、行政の言うことを聞いたら売上が激減、言うことを聞かなければ売上が上昇というのは本末転倒ですよね。
これに対して長谷川社長は次のように話しています。
「時短する、しないは各社の判断だ。このコロナ禍を生き残るために必死で営業してきた結果、売上が増え、私たちも驚いている。行政からの要請を無条件で正しいと認識することが民主主義だとは思わない。私たちは行政に任せたままでは会社を存続できないと考え、通常営業を行う判断をした。自身で考え意見を発することが国を良くしていることだと考えている。」
必死に生き残るために時短要請に応じないしない姿勢は、企業を守るという経営判断だったと言えるものの、別の見方をすれば「自分さえよければ新型コロナの感染拡大なんか知ったこっちゃない」とも受け取られかねません。
しかも、自身で考えた結果の行動が間違った方向に進んでいるとなれば、国を良くするどころか迷惑をかける結果にもつながります。
グローバルダイニングの長谷川社長が一石を投じた今回の騒動には賛否があるように、それぞれの立場によって見方が変わってくる問題です。
時短営業の要請を守るのが正しいか正しくないかという議論を深めても、国民の分断につながる未来しか見えないようにも思えます。
政府には、飲食業界を悪者にして窮地に追い込むのではなく、どうにか営業を続けて利益を確保できるような政策を打ち出してもらいたいものですね。
まとめ
いかがでしたか?
今回はハードな内容となりましたが、どうしても伝えなければいけないものかと思い、書かせていただきました。
筆者の中では、飲食店に対する政府の風当たりがとても強いと感じてしまうところがあります。
自身だけでなく、家族の生活がかかっている中で飲食店・企業のみなさまは働いているかと思いますし、それぞれ想いはあるかと思います。
だからこそ、1日でも早くコロナ禍が終息にむかうこと、そしてもう少し飲食店側のことを考えた政府の対応を期待するばかりです。
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著者プロフィール
小学6年生の時に某テレビ番組の取材で有名ホテル総料理長に出会い食の世界に魅了されて、中学2年生の時に海外派遣団に参加。シンガポール及びマレーシアへ訪れた際に海外の食を知る。高校1年生から単身カナダへ渡り世界の食に触れ、帰国後は飲食人としての人生をスタート。複数の飲食店でのアルバイトを経験し、新卒で居酒屋リーディングカンパニーの人事労務に勤める。上場及び未上場の飲食企業複数社にて、人事、新卒及び中途採用、教育、経営企画、株式上場などの責任者(部長・局長)を歴任。面接人数は8,000名以上、各専門学校にて就職ガイダンスの外部講師として講演活動も積極的に行っている。
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