嘘か本当かわからない噂の数々!謎の多いミシュラン調査員について
ミシュランで星をとったお店と聞くと、美味しさは保証済みというイメージがありますよね。
しかし、ミシュラン調査員の正体は誰も知らないので、どのような調査をしているのかも謎です。
そこで今回は、謎多きミシュラン調査員について解説します。
また、飲食店で働くみなさんが気になるであろうポイントとして、ミシュラン調査員は本当にわからないのか?という疑問についても考えていきます。
そもそもミシュランとは?
ミシュランと聞くと、たくさんのレストランが掲載されたガイドブックをイメージする人が多いのではないでしょうか。
たしかに、レストランの情報が掲載されたガイドブックは最も有名ですが、実はミシュランにはレストラン情報以外にもバリエーションがあります。
有名なのは、レストランとホテルが掲載されている赤色の「レッド・ミシュラン」、旅行ガイドが載っている緑色の「グリーン・ミシュラン」です。
ほかにも、自動車旅行向けの道路地図もミシュランが出版しています。
レッド・ミシュランは、ヨーロッパ以外にアメリカやアジア各国で地域版が作成されていて、合計で年間約100万部も販売されているようです。
ヨーロッパでは影響力が低下しているようですが、日本やアメリカではまだまだミシュランの影響力は大きく、飲食店の売上に影響を与えることもしばしば。
そんなミシュランのガイドブックが初めて作られたのは1900年のこと。
日本で初めて出版されたのは2008年ですから、ずいぶん昔からあることに驚いた人もいるかもしれませんね。
しかも、ミシュランは飲食とは全く関係のない事業をやっている会社だと聞くとさらに驚くのではないでしょうか。
実はミシュランはフランスのタイヤメーカーなのです。
もともとは、ドライブをより安全で楽しいものにしてもらうことを目的に、ドライバー向けのガイドブックを作成して無料で配布したのが始まりです。
当時は少なかった自動車修理工場のリストや市街地図、タイヤの使い方などの情報とともに、休憩のためのガソリンスタンドやホテル、レストランの情報が掲載されていました。
その後、1920年にはミシュランガイドブックは無料配布から有料販売へ方針転換。
そして、評判が高く質の良い料理を提供してくれるレストランやホテルに星をつける制度が1926年から始まりました。
このころには、現在とほぼ変わらない星の基準が出来上がっていたといわれています。
ちなみに、2021年からは「グリーンスター」と呼ばれる新しい評価制度が始まりました。
グリーンスターを獲得するには「サステナビリティ」を推進しているお店であることが条件です。
サステナビリティは、簡単に言うと環境と社会、経済を守るという意味があり、サステナビリティを推進している飲食店ほど評価されます。
あわせてサステナビリティとは「持続可能な社会」とも呼ばれています。
たとえば、フードロスの削減、地産地消、プラスチック製品の使用削減などに取り組んでいることが評価の対象になります。
ミシュランガイドの星はどうやって付けているのか?
ミシュランガイドと言えば、おなじみの「一つ星」や「三つ星」などの星による評価。
実は、ミシュランが飲食店を評価する際の基準はあくまでも料理のみで、内装がおしゃれだったり豪華だったり、スタッフのサービスが丁寧だったりしても星の評価対象には入りません。
もちろん、料理以外のポイントとしてお店の快適度もチェックされているのですが、快適度の評価は星ではなく、スプーンとフォークが交差したマークで評価されます。
ちなみに評価のレベルは、上から「豪華で最高級」「最上級の快適」「非常に快適」「快適」「適度な快適」「簡素」の6段階になっています。
肝心の料理の評価は、以下の5つの観点から審査されています。
1.素材の質
2.調理技術の高さと味付けの完成度
3.独創性
4.コストパフォーマンス
5.常に安定した料理全体の一貫性
素材の質や料理の完成度がチェックされているのは驚くべきものではありませんが、独創性やコスパまで見られているというのは意外な印象を受けるかもしれません。
どんなに高級な食材を使用していても、オリジナリティに欠けていたり素材を生かしきれていなかったりすると評価されないということですから、たくさんの星をもらうのはなかなか難しいように思えますよね。
なお、評価基準は世界共通で、調査員が評価した後に調査員と編集長、そしてガイドブックの総責任者が話し合いをしたうえで星の有無や星の数を決めるという流れになっています。
評価の結果、星がつく飲食店は一つ星から三つ星までのいずれかが与えられることになりますが、それぞれの星には以下のような意味があります。
・一つ星:そのカテゴリーで特に美味しい料理
・二つ星:遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理
・三つ星:そのために旅行する価値がある卓越した料理
評価したお店については、年間4万5,000通も届くといわれている読者からの手紙やメールもきちんとチェックしていて、それをベースに再評価することもあるようです。
再評価によっては三つ星から星がゼロになってしまうケースもあるため、ミシュランの評価を気にしている店舗にとっては戦々恐々のシステムと言えるでしょう。
ミシュラン調査員として採用されるための3つの条件
飲食店で働くみなさんにとっては、どんな人がミシュランの調査員なのか気になるところですよね。
ここでは、ミシュラン調査員になるための3つの条件を紹介します。
誰でも調査員になれるわけではありませんし、美味しい料理を食べて評価するだけでお金がもらえるという夢みたいな仕事でもないようです。
1、ホテルスクール卒業者、レストランなどの飲食店やホテル業界での経験がある
まず、ホテルスクールを卒業した人または飲食業界やホテル業界で5~10年の業務経験がある人でなければミシュランの調査員になることができません。
ただ、必ずしも料理人やシェフといった職業でなくても大丈夫です。
調査員に求められるのは、料理のスキルがあるかどうかよりも、飲食業界やホテル業界のビジネスについての認識度が重要視されます。
2、英語が話せる
ミシュランの調査員は、世界中を飛び回ってお店を調査するのが仕事です。
100人ほどしかいないといわれているミシュラン調査員ですから、一つの国にとどまって地道に調査をしていれば良いというわけではありません。
調査対象の国は、英語が母国語もしくは第二言語になっている国がほとんどなので、英語ができないと仕事にならないというわけです。
そもそも、調査員はお店のスタッフと話をする機会もあります。
言葉が通じなければ仕事にならないので、やはり英語を話せることは必要な条件と言えるでしょう。
3、毎日続く外食に耐えられる胃袋
ミシュラン調査員は少ない人数でたくさんのお店を回らなければならないので、必然的に外食だらけの毎日です。
調査量は、なんと年間500~600食にもおよぶといわれているほどですから、体にも相当の負担がかかる業務でしょう。
時には食べたくない料理も食べなければいけないかもしれませんね。
脂っこい食事が続いたり、麺類だけが続いたり、肉類だけが続いたり…そのような事態にも耐えられるような強靭な胃袋が必要なのです。
ミシュラン調査員になるまでの流れ
ミシュランの調査員は全員がミシュランの社員です。
調査員として採用後、数カ月間ヨーロッパでトレーニングを受け、ミシュランの理念や評価基準を徹底的に学びます。
そして、先輩調査員の指導を受けながら経験を積み、独り立ちできるようになったら本格的に調査に加わるという流れです。
調査員になるまでの道のりは長いですが、ミシュランの評価によってお店の評判や売上に大きな影響を与えてしまいます。
場合によっては閉店に追い込まれる可能性もあるため、責任を持って公正な評価ができるようになるまでは独り立ちできないということなのでしょう。
なぜ調査は秘密裏におこなわれるのか?
ミシュランの調査は、まるでスパイのように極秘に行われるのが鉄則です。
お店側は誰がミシュラン調査員かわからないのはもちろん、調査対象になっているかもわかりません。
もしも、あらかじめミシュラン調査員の人物像がわかっていたり、いつ調査に訪れるのかわかっていたりしたら、調査のための対策や準備をしてしまいますよね。
つまり、公平な審査はできないということです。
仮に、ミシュランの調査員が訪れる日がわかっていれば、その日だけ食材のグレードを上げたり特別なサービスを提供したりするなど、最高の営業で出迎える店も現れるかもしれません。
そうなると、ミシュランの調査員は本来の営業の状態とは異なる情報をそのまま受け入れてしまい、高い評価をミシュランガイドに掲載するという事態になる可能性もあります。
その結果、ミシュランガイドの評価は誰も信用しなくなり、ガイドブックを購入してくれる人もいなくなるでしょう。このような問題を避けるためにも、調査はすべて極秘で行われるというわけです。
実際に飲食店側は本当に調査員の存在はわからないのか?
飲食店で働く側としては、どのような人が調査員なのか興味があるもの。できれば特徴などを知っておきたい人も多いのではないでしょうか。
紹介したように、ミシュランの調査員は100人ほどという少数精鋭部隊ですから、何年も調査を続けているうちに調査員の身元がばれてしまうことはありそうですよね。
家族や友達の何気ない一言で調査員である事実が広まってしまうこともあるかもしれません。
ただ、ミシュラン側でも絶対にバレないようにしっかりと対策を練っています。
たとえば、予約の際に使う名前は偽名です。
そして、調査員の個人情報が流出するのを防ぐために、自身がミシュラン調査員であることはごくわずかな人にしか公表しないことになっています。
時にはミシュラン調査員であることをお店に打ち明けて、より詳しい質問をすることもあるようですが、その場合は必ず会計を済ませた後というのが調査員の鉄則。
調査員であることが判明して急にサービスを変えられてしまわないように、会計後に正体を明かすのです。
基本的に、調査員であることを説明するのはガイドブックへの掲載を打診するためのものですから、そう多くはないように思えますが…。
調査員の特徴については、ネット上にさまざまな情報があります。
たとえば「調査員は2人で来店し、1人はアラカルト、もう1人はコースを注文する」「食べ終わった後は皿を持ち上げて裏面を確認する」「食べるのが仕事だから基本的に太っている」など、信ぴょう性のない噂話も混ざっているようです。
あらかじめ調査員の特徴を知っておきたいという気持ちは頷けますが、調査員のために営業を続けているわけではないので、あまり気にしすぎることもないでしょう。
それよりも、普段の営業に真摯に向き合い、一人ひとりのお客様に心を込めた商品やサービスを提供することのほうが遥かに大切です。
まとめ
いかがでしたか?
今回は謎多きミシュランガイドの調査員についてお話ししてきました。
元々星がついているレストランは、そのグレードを維持、もしくはもっと上の星を…と頑張っているかと思いますし、「星を獲得できるように」と新しい飲食店も頑張っているかと思います。
たしかに、その評価を決めるのはミシュランの調査員ではありますが、前述のとおり調査員のためではなく、普段の営業に真摯に向き合い、一人ひとりのお客様に心を込めた商品やサービスを提供することが一番の対策になるかと思えます。
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著者プロフィール
小学6年生の時に某テレビ番組の取材で有名ホテル総料理長に出会い食の世界に魅了されて、中学2年生の時に海外派遣団に参加。シンガポール及びマレーシアへ訪れた際に海外の食を知る。高校1年生から単身カナダへ渡り世界の食に触れ、帰国後は飲食人としての人生をスタート。複数の飲食店でのアルバイトを経験し、新卒で居酒屋リーディングカンパニーの人事労務に勤める。上場及び未上場の飲食企業複数社にて、人事、新卒及び中途採用、教育、経営企画、株式上場などの責任者(部長・局長)を歴任。面接人数は8,000名以上、各専門学校にて就職ガイダンスの外部講師として講演活動も積極的に行っている。
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